静岡県知事の発言

 「県庁はシンクタンクです。野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりということと違って、皆様方は頭脳、知性の高い方たちです」

 4月1日、川勝平太知事(75歳)が新任職員に公務員の心構えを説く中での発言である。この3月にも女子サッカーチームが表敬訪問した時に「男の子はお母さんに育てられる」と話し、「子育ては女性の役割とする性別役割固定論ではないか」と批判されるなど、これまで度々「問題発言」を繰り返してきた。

 当初、知事は記者会見で謝罪はしたものの発言自体は「切り取られたもの」「言葉が不足していたことは反省するが、撤回はしない」としていたが、4月5日夜、急遽、県庁で記者団に「職業差別ととらえられかねないところは削除して撤回する。なりわいの違いを説明したかった」と述べ、先の発言を撤回した。

 何が問われているのか。事の本質は、農業や酪農などの一次産業やモノづくりなどの二次産業に携わる方々への職業差別であり、県行政のトップにある知事の人権認識である。しかも、初期の段階で「そんなつもりで言ったのではない」と自己弁護と受け止めた側への責任転嫁に終始し、世論の批判の高まりを受けて漸く「撤回」を表明したことにある。

 知事は責任を取って6月に辞任するらしいが、「6月のボーナス支給を充てにして辞めるのか」「今すぐ辞任し、多額の退職金も辞退すべし」という厳しい声が広がっている。

※川勝平太(1948年~) 主な経歴:早稲田大学政治経済学部教授、国際日本文化研究センター教授、学校法人静岡文化芸術大学学長、静岡県知事(2009年7月~4期目)