「水平社宣言」
2022年は全国水平社100周年の記念すべき年だった。当時の時代背景は『解放令』が出て50年経たものの厳しい差別の実態は解決されず、加えて世の中は同情や哀れみ意識が大勢で、「被差別部落の人たちの生活や態度を改めたら差別されない」という融和論が支配的だった。
西光万吉はじめ、阪本清一郎など多くの被差別部落の若者は、「そんなことで自分たちは解放されない」「自ら立ち上がってこの問題を解決しよう」と決意し、1922年3月3日、京都岡崎公会堂にて「全国水平社」が誕生するのである。その時、発せられたのが『水平社宣言』で、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と人間解放を高らかに謳った日本初の人権宣言であった。
水平社の思想である「寝た子を起こすなではダメだ」「差別されるのは自分たちの責任ではない」との思いは全国に広がり、露骨な差別言動に対しては「徹底糾弾」をスローガンに教育・啓発を行いながら同情融和思想を克服していった。しかし、水平社運動は大きな2つの戦争に飲み込まれながら、その精神は戦後の部落解放運動へと引き継がれていくことになる。
※西光万吉:奈良県御所市の浄土真宗西光寺に生まれる。本名は清原一隆。全国水平社宣言を起草(1895年~1970年)
※阪本清一郎:奈良県御所市に生まれる。実家は膠製造業を営む。部落解放運動家、全国水平社創設者の1人。(1892年~1987年)