シカゴ

 2005年に初来日して以来、大阪公演が5年ぶりとなるブロードウェイミュージカル「シカゴ」(世界38か国・500都市以上・13言語で上演)がオリックス劇場で催されている。今回は、トップスターのマシュー・モリソンが弁護士役として初出演することで話題だ。女性(妻)と2人でワクワクしながら鑑賞した。

 殺人を犯して投獄されたロキシーと牢獄で出会った歌手のヴェルマの2人を主人公に、凄腕弁護士ビリーを雇い、マスコミを巻き込んでスターの道を夢見るストーリー。1920年代のシカゴを舞台に欲望・愛情・憎悪など、人間の喜怒哀楽を圧巻の歌とダンスで魅了する。中でも舞台中央に位置するオーケストラの迫力は満点。生演奏と歌やセリフが見事に重なり、鍛えられた肉体の激しく柔らかい動きや息遣いに劇場ならではの臨場感を味わった。

 本当に感動のひと時だったが、一点、不都合に思うことがある。と言うのは、開演前に「会場のお客様にご案内申し上げます。鑑賞にあたってはお座りのお席からくれぐれも身を乗り出したりしないで下さい。身を乗り出されますと後ろの席の方が見えづらくなりますのでご注意ください。」と、しつこく再三アナウンスが流れたことだ。そんなに態度の悪い人がいるのだろうかと訝ったが、始まって1時間が過ぎたころ、妻が後ろの人から何か言われている。どうも、私が座席から身を乗り出していて見えにくいと苦情を言われているらしい。

 「すみません」と、思わずお尻を前にずらして頭を低くしたものの、違うねん!

 この劇場の座席椅子のクッションは最悪で(ほんまに!)、30分も座っていたらお尻が痛くて痛くて堪らなくなる。とにかく座り心地が悪いのだ。そこでお尻の位置を前後左右にずらしつつ、悪戦苦闘のすえ、一番楽な態勢が太ももの裏を椅子の平面にぴったり当て、前かがみになる姿勢だったのだ。しかし、その座り方こそが、アナウンスでお馴染みの前のめりの姿勢だったのだ!その証拠に、20分休憩の時間にロビーで多くの人が腰やお尻のストレッチや体操をしているではないか!

 私は声を大にしてオリックス劇場の支配人に言いたい。「大阪厚生年金会館を12年前にリニューアルオープンしたオリックス劇場は素晴らしい劇場と思います。素敵な公演を企画開催してくださって感謝もしています。汗水働いて高い入場料を工面して鑑賞もします。ですからお願いです。今すぐに、座席の椅子を快適な物に全部換えて下さい!そうすれば、身を乗り出すような観客はいなくなります。あの事前アナウンスも不要になります!!」