世界の人権の歩み

 第一世代の人権は、イギリスの植民地であったアメリカの独立宣言(1776)が生命と自由と幸福を追求する権利を求めました。その後、フランス人権宣言(1789)で表現の自由や信教の自由、職業選択や居住・移転の自由などの自由主義的基本権(自由権)が盛り込まれました。フランス人権宣言は、封建的な絶対主義体制の打破を目的とするフランス革命が生み出したものでした。

 第二世代の人権は、フランス革命やフランス人権宣言以降、新しい社会問題が生じてきました。例えば、多くの失業者や子どもが学校にも行けないこと、働かなければ食べていけないこと、住む家もない貧しい人々が都市にあふれてきたことです。このような時代背景のもと、1919年ドイツで制定されたワイマール共和国憲法で社会権的基本権(社会権)が盛りこまれました。この社会権の中には、働く権利、教育を受ける権利、社会保障を受ける権利、労働組合を結成したり、ストライキをする権利などが含まれています。

 第三世代の人権は、第2次世界大戦以降、植民地支配を受けていた国々が政治的独立を遂げていきました。1970年以降、発展途上国が対等に評価される必要があるとして「新国際情報秩序」を樹立する必要が主張されようになり、1986年に国際連合は、途上国の「発展の権利」を承認しなければならないとする宣言を出しました。こうして、世界の人権は「自由権」「社会権」「発展権」として拡大してきました。

 しかし、フランス人権宣言は歴史的な意義を持ったものでしたが、女性を排除していたという決定的な欠陥を持っていましたし、アメリカの憲法は選挙に際して有権者数を算定する方式に黒人5人で白人3人と見なすという差別条項を含んだものでした。これまでの世界の人権の歩みは「男性、白人、富者」中心のものでした。これからの人権は、性別や人種や貧富に関係なく、全ての人々に保障されなければならないものとして発展していかなければなりません。