性的マイノリティの人権

 私たちは、性を男か女かの二元論的に捉えがちだが、性はグラデーションのように多様である。厚生労働省は一昨年、履歴書の性別欄を空欄にした。性について自由記載としたのだ。心と体の性が違う人もいるし、どちらかにあらわせない人もいる。

 先日、「大辞林」(新版)を買って《恋愛》の頁を開いた。確か旧版には「男女が互いに相手を恋い慕うこと」とあったが、そこには「互いに恋い慕うこと。また、その感情」となっている。恋愛は必ずしも男女間にあるものでなく、男性と男性、女性と女性の間にも成立するという肯定的な解釈だ。

 大学の授業で、体の性は男性だが心の性は女性という学生がいた。明るくてとても素敵な学生だった。人権について学ぶとき、当事者の思いや願いをしっかり受け止め学び合わなければならない。人権問題は現実の問題である。

 若者の中には性自認を個性として見ている人が多い。しかし、間違ってはいけないのは本人の思いを尊重することだ。周りの者が勝手に個人情報を他者に伝えたり、広めることは人権侵害になる。人間は多様な生き物である。

 日本国憲法に「婚姻は両性の合意において成立する」とある。札幌地裁の判例では、「両性」の解釈を男性と男性、女性と女性も含まれるとした。現在、日本では同性婚は認められていないが、いずれ認知される時代が来ると思う。人権問題の解決は大きな岐路に立っている。