立派な人とは
世の中は「損得・勝ち負け・好き嫌い」が支配的である。子どもへの誉め言葉で「賢いね」と多くの大人が言う。しかし、高学歴で肩書が立派であっても社会的制裁を受ける人もいる。「賢さ」はあるが、「私利私欲」に塗れた「ずる賢さ」や「悪賢さ」が動機だからだろう。本当に立派な人はどういう人か。
「正義・真実・公平」を求めて生き抜いた人がいる。その人は、パキスタンの貧しい人々の治療や難民キャンプや山岳地域の診療をはじめ、アフガニスタンで頻発する干ばつに対処するため、約17年間にわたって約1,600本の井戸を掘り、全長25.5kmの灌漑用水路を引いて65万人以上の命を支えた中村 哲さんである。(1946~2019年)
中村さんは医師として病気の少年を治療したとき考えた。「少年の病気の原因は、汚れた水と粗末な食事にある。だとすれば薬の処方ではなく、このアフガンの乾いた大地に水を引き、緑豊かにすれば子どもの命が救われる」と。それから白衣を脱いでスコップを手に井戸と用水路の建設に邁進する。
人の値打ちは何で測れるか。中村さんの姿にその答えがある。しかし、2019年12月4日、ジャラーラーバードで何者かによって銃撃され死去する。中村さんの志は、今、残されたたくさんの人々に引き継がれている。