認知症と人権

 超高齢化に伴う日本社会の認知症問題は大きな人権課題である。認知症は、脳の病気や怪我によって日常生活に支障をきたすことが約半年以上続く状態をいう。

 現在、国内の認知症の人は約600万人と推計されるが、何らかの認知機能障害を持った人を合わせると1000万人以上いると考えられる。かつては、「ボケ老人」とか「痴呆の人」などと言われたが、2004年にそうした差別的な言い方から医学的症状の表現に近い「認知症」に改められた。

 しかし、認知症に対する偏見や差別意識は無くなっていない。認知症の高齢者が部屋にとじ込められたり、介護に疲れた家族がやむなく認知症の親を預けた施設で虐待を受け、寝たきりのまま亡くなるといった事件が後を絶たない。

 私たち一人ひとりが、認知症を自分事として認識し、認知症の人をはじめ、すべての人が安心して幸せに暮らせる社会を実現させなければならない。