100年前の教訓

 1923年9月1日、死者・行方不明者10万5000人、被災者190万人という日本最大級の関東大震災が起きた。木造家屋の密集する住宅地に強風に煽られた火の粉が襲った。地震発生時刻が午前11時58分。昼食準備の台所から火の手が広がったことも甚大な被害になった。

 震災による被害もさることながら忘れてならないのは、震災発生後に民衆、警察、軍隊による朝鮮人、中国人、日本人(障がい者や被差別部落の人々等)が殺傷される「事件」が発生したことだ。「朝鮮人が暴徒化している」「井戸に毒を入れ、放火して回っている」などの流言飛語から多くの人々の命が奪われた。内務省警保局調査(1923年)では、朝鮮人死亡231人・重軽傷43名、中国人3人、朝鮮人と誤解され殺害された日本人59名、重軽傷43名とある。(実態はもっと多いと思うが)

 日本は1910年、「日韓併合」の名のもとに朝鮮半島を植民地化した。朝鮮の人々が日本人に「反感」を持っているのではという疑心暗鬼や恐怖心が震災という状況下で「虐殺」行為に走ったのではないか。差別行為の方程式がある。それは、不確かな情報(噂など)×予断・偏見×利害対立=人権侵害である。100年前の教訓は今も生きている。