風評被害
今夏、福島第1原発からの処理水放出に反対する中国が、日本の海産物の全面的な検査を始めた。実質の輸入禁止である。継続されれば漁業関係者の死活問題になる。原発事故から12年、地元鮮魚の流通がようやく軌道に乗ったところだった。
処理水の海洋放出については、国内でも風評被害が起きる不安を「感じる」人は「大いに」「ある程度」合わせて76%を占める。しかし、ここは冷静かつ正確に処理水を考えることが重要だ。
処理水は、海水で薄めてから海洋放出される。 トリチウムの濃度は、1,500ベクレル/リットル未満と定められ、日本の安全基準の40分の1、世界保健機構(WHO)が定める飲料水ガイドラインの7分の1だ。正しく知ることが「不安」や「恐れ」を払拭できる。政府には、国内外に丁寧な情報提供と科学的根拠に基づく説明を粘り強く続けていくことが求められる。