東京高裁の判決
6月28日、東京高裁は全国の被差別部落の地名をまとめた本の出版やウェブサイトに地名リストを載せることは「人権侵害にあたる」と、出版社に損害賠償を命じた。
日本社会には依然として同和地区やその出身者に対して偏見や差別意識が存在し、出版社の行為を「差別される者の人間としての尊厳の否定に等しく、許容できない」と断じ、憲法13条(個人の尊重を保障)14条(法の下の平等)を踏まえて「出身などを推知させる情報が公表されると、不当な差別を受け、平穏な生活を送ることができる人格的な利益が侵害される」と明言した。
さらに地裁の「リストにある地域に現在も住所か本籍がある人」とする判決より、救済対象範囲を「本人や親族の住所か本籍が、現在あるか、過去にあった人」と拡大した。土田昭彦裁判長は「人生に与える影響の大きさや、ネット上を中心に部落差別の事案が増加傾向にあることなどを考えると、被差別部落があったとされる地域の出身だとわかる情報が公表されることは、差別を受けない権利の侵害にあたる」と指摘した。
今後は、この高裁判決により、ネット上の情報削除を命じる範囲が広がることになり、原告側の「差別されない権利」を認めたことは高く評価される。今やインターネットは暮らしになくてはならない便利なものであるが、その利便性を悪用して不特定多数者に偏見や差別意識を扇動することは許されないことだ。2016年に「部落差別解消推進法」が施行されたが、社会に現存する部落差別を解消するための積極的な対策は喫緊の課題である。