浮御堂

 大河ドラマで紫式部をはじめとした平安貴族の暮らしが描かれているが、その時代に琵琶湖畔で栄えた堅田(かたた)を訪れた。中世から近世の堅田地域は湖の水運・漁業権を掌握して地方自治都市として繁栄を極めた。今も湖族と呼ばれた堅田衆の歴史や文化を伝える史跡や資料が町の郷土資料館に多く残されている。

 湖畔の中でも当時の面影をそのまま残してている浮御堂を参拝した。平安中期に比叡山の僧恵都源信によって交通安全と民衆救済を祈願して千本仏を安置し湖中に建てられた。近江八景にも描かれ、松尾芭蕉をはじめ多くの文化知識人に愛されてきた美しい佇まいの御堂である。

 古い町並みの路地に入ると境内一面に緑苔の広がる祥瑞寺がある。トンチ和尚で有名な一休さんが20代から12年間、修行した寺院だ。堅田落雁で知られる和菓子屋の金時堂で「一休せんべい」を買った。帰りの車中で『踏み出せばその一足が道となる、迷わず行けよ、行けばわかる』という和尚の言葉を思い浮かべた。

※一休宗純、1394年‐1481年 室町時代の臨済宗大徳寺派の僧・詩人