教師と医師の共通点
1920年~1970年前半にかけて活躍した作家の吉屋信子は、「金魚売り、買えずに囲む 子に優し」という句を残している。戦後の焼け野原の街中に、戦災孤児が多くいた頃、金魚を買えずに囲む子(貧しい子ども)にやさしく接する金魚売りの姿を詠んだ句で、思わず笑顔がこぼれる作品だ。教育の原点は、「笑いと人権」と思う。「笑い」は子どもへの愛情を込めた微笑。「人権」は弱い者への共感である。
教師と医師の共通点は何か。第1は、子どもや患者の命を預かる仕事。第2は、信頼関係のもとで成立する仕事。第3は、子どもの成長も患者の病気も必ず良くなるという確信を持つ仕事である。両方とも人との豊かな出会いや素敵なふれ合いを通じてやりがいを持つ仕事だ。
「教育は器に水を注ぐようなものではなく、子どもの心に灯をつけること」(ウィリアム・アーサーワード:英国の教育学者)
「学ぶとは、胸に誠実を刻むこと。教えるとは、共に希望を語ること」(ルイ・アラゴン:仏国の詩人)
ただ、教師と医師の決定的な違いは、労働の対価である所得待遇だ。教師は極めて低賃金で働いている。国の教育予算を5.6兆円(公的支出における教育費の割合は8%、OECD加盟国の中で3番目に低い)から1兆円増やして6.6兆円にして、教師の所得を2倍にすれば、「働き方改革云々」と言わなくても優秀な人材が競って集まると思う。資源の少ない日本にあって、子どもへの教育こそが未来の日本を発展させる源だ。教師が元気なら子どもの笑顔は広がる。教育を担う教師にこそ、満足のいく手厚い所得を保障しなければならないと強く思う。
