学生相談室から

 戦前教育の反省から国民主権たる民主教育がスタートして80年。その象徴が「6・3・3」制の学校教育である。その理念は、「すべての子どもにその能力に応じて教育を保障する」ことだが、ともすれば「一斉型」で「画一的な横並び」教育に陥り、地域や学校の実情、子どもや保護者のニーズを踏まえた多様性や個性を重んじる教育課題と乖離しているようにも思える。森の危険をいち早く察知して飛び立つ小鳥や小動物のように一番弱い立場の子どもが「不登校」や「いじめ」にあっているのではないかと危惧する。

 効率主義的な教育は、2点間の「最短距離」を求める。一方、「最長距離」を求める教育は、試行錯誤や多面的な視点からアプローチし、学びのプロセスそのものを重視する考えである。知識をインプットするだけでなく、その知識を使って深く考察し、自分の考えを行動に発展させる。「最短距離」は、1つの選択枝しかないが、「最長距離」は無限である。

 数年前、知人のカルロスさんが、日本へ来て驚いたことがあると言った。それは、「街中の日本人が、みんな同じに見える」というのだ。「リオデジャネイロでは、様々な人々が暮らしていて、髪や肌の色は違って当たり前だし、服装も色とりどり。みんな違うから落ち着くのです。日本では、みんな一緒に見えるので落ち着きません」と。

 「みんな違って当たり前」がカルロスさんの常識だが、日本では一般的に「みんな一緒が当たり前」、「みんなと同じである」ことが安心の基盤である。「毛色が違う」という言葉もあるぐらいで、「異色(質)な者(物)を排除する」という思想がある。

 グローバル社会の進展に伴って格差と分断の拡大が懸念される。国籍や民族の異なる人々が社会の一員として互いに尊重され、共に生きる多文化共生社会の実現が求められている。春に桜、夏に向日葵、秋に菊、冬に牡丹が咲くように、人も個性という花がある。あなたは、あなたでいいのです」という考えが当たり前になる世の中になれば、子どもの夢や希望がもっと広がるのではないかと思う。学生相談室には、様々な悩みや不安を抱えた学生が来室する。彼らにいつも笑顔で声かけするのは、「みんな違って、みんないい」という言葉だ。

関西外国語大学 学生部 学生相談室長 明石 一朗

あかし・いちろう/1979年立命館大学文学部史学科卒業。大阪府内の公立小学校で教員となり、学校長で退職。2014年から関西外国語大学短期大学部教授及び人権教育思想研究所長を経て、2025年より学生相談室長として学生の相談等の指導にあたる。大阪府教育委員会事務局・東京事務所文部科学省担当などを歴任し、義務教育から高等教育を通して学校・地域・家庭教育に長年携わり、子どもの人権など今日の教育諸課題に取り組む。現在、大阪府教育庁学校教育審議会部会長、枚方市人権尊重まちづくり審議会会長、羽曳野市教育行政評価委員会委員長、舞鶴市志楽幼稚園教育アドバイザー等を務める。