映画の力

 改めて映画「少年H」(2013年 原作:妹尾河童、監督:降旗康男)を観た。声高に「戦争反対!」などと言えない時代にあって、忍び寄る戦争の恐怖に耐えながらも淡々と生きる市民生活がリアルに描かれている。父母役の水谷豊さんと伊藤蘭さんの相性もぴったりだ。

 絵葉書の一件で友だちを非難するH少年を「友だちは、悪うないんよ」と諭す父親は、周囲が戦争に向かっていく中で、息子に常に自分の頭で考え、他者への思いやりを忘れないことの大切さを伝える。

 昭和初期の神戸が舞台。戦争に翻弄されつつも寄り添いながら力強く生き抜ぬいた当時の人々の姿に令和の時代を生きる私たちは、多くを教訓としなければならない。悲劇は、知らず知らずのうちに何気ない日常生活から忍び込んでくる。みんなが言うから「正しい」と思いこまず、何が本当のことかを自身で確かめ、「おかしいことは、おかしい!」と言うことの大切さを強く思う。